電気羊は仮想空間で進化の夢を見るか?

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長いこと私が心の奥の方で静かに「やりたいなぁ…」と思っていたことがあります。それは小さな世界で進化の実験をすることです。もちろん実際にやるのは難しいので計算機の上で、ということになりますが。突飛なことを、と思われるかもしれません。あるいは、現状の計算リソースでは足りないのでは? という批判もあるかもしれません。が、セル・オートマトンなどに代表されるようにごく単純なルールから複雑な事象が生まれるということは既に示されています。

もうすこし具体的にはセル・オートマトンをもう少し複雑にし、より「生命」らしくした存在を用いて観測をしてみたいと思っています。思考をし、学習をし、再生産をし、そして死ぬことができる「生命」と、それが生きる環境を用意して、自然選択に任せてどのようにそれが発達するかを見守る、といった感じの漠然としたプロジェクトです。もし条件が合えば、徐々に「知的(?)」な生命が生まれていくかもしれません。

これは簡単なことではないですし時間のかかることだと思います。おそらくたくさんの人々が過去に挑戦してきたテーマでもあるでしょう。私が個人的な趣味としてやったところで何か有益な結果が生まれるかといわれれば、それはわかりません。今までやってきた物理学と神経科学からひょっとしたら新しい知見を持ち込めるかもしれません。仮に知的生命体様のものが一切出てこなかったとしても、何かしら学ぶところがあることでしょう。とりあえずモチベーションはそれでよしとします。

当面は2つのことに注力するつもりです。1つめは個体の情報の継承と、自然選択を可能にする環境の構築。広い意味では、「遺伝的アルゴリズムの実装」と言えるかもしれませんが、目標関数だとかを設定するのではなく、あくまで「生き延びた者が次の世代を作る」というルールの実装になります。勝てば官軍とでも言いましょうか。2つめは、生きる過程でトレーニングが可能、かつ、進化によって構造自体のの変化が可能なニューラルネットワークを「生命」に持たせることです。

これから書く記事はこの探求を記録した個人的な日誌のようなものになることと思います。道は長いですが、その道中で小さなトピックを見つけて書いたり、考察した事柄をまとめたりすることになると思います。もし楽しみにしてくださる方がいらっしゃれば幸いです。

Author: Shinya

I'm a Scientist at Allen Institute. I'm developing a biophysically realistic model of the primary visual cortex of the mouse. Formerly, I was a postdoc at University of California, Santa Cruz. I received Ph.D. in Physics at Indiana University, Bloomington. This blog is my personal activity and does not represent opinions of the institution where I belong to.